1. インボイス制度導入による経費精算の変更点
1-1. レシートと適格請求書の違い
インボイス制度導入後、経費精算において従来のレシートだけでは仕入税額控除の要件を満たせなくなりました。適格請求書には、登録番号、取引年月日、税率ごとに区分された消費税額、適用税率など、法定記載事項の記載が必須となります。一般的なレシートでは記載項目が不足しているため、適格請求書発行事業者から適格請求書を入手する必要があります。
1-2. 少額支払における特例
取引金額が3万円未満の課税仕入れについては、適格簡易請求書での処理が認められています。コンビニエンスストアやタクシーなどの発行するレシートも、適格請求書発行事業者の登録番号が記載されていれば、適格簡易請求書として認められます。ただし、事業者番号の記載がないレシートは、仕入税額控除の対象外となる点に注意が必要です。
1-3. インボイス制度における経過措置
2023年10月から2029年9月までの間は、免税事業者からの仕入れについても一定割合の仕入税額控除が認められる経過措置が設けられています。2026年9月までは80%、その後2029年9月までは50%が控除可能です。ただし、経過措置の適用を受けるためにも、取引内容を記載した帳票類の保存は必要となります。
2. レシート・領収書の具体的な取り扱い方法
2-1. 保管方法と期間
経費精算に関する書類は、法令上7年間の保存が義務付けられています。感熱紙のレシートは時間の経過とともに文字が消えてしまう可能性があるため、コピーまたはスキャンデータとして保管することが推奨されます。電子帳簿保存法に準拠したスキャナ保存を行う場合は、一定の要件を満たすシステムでの保存が必要となります。
2-2. デジタル化対応の手順
レシートのデジタル化には、スマートフォンやスキャナーを使用して画像データを作成します。経費精算システムを導入している場合は、OCR機能により自動でテキストデータ化することも可能です。デジタル化の際は、金額、日付、取引内容、事業者登録番号などの重要情報が明確に読み取れる画質であることを確認する必要があります。
2-3. 電子帳簿保存法への対応
電子帳簿保存法に基づくスキャナ保存制度を利用する場合、タイムスタンプの付与や検索機能の確保など、一定の要件を満たす必要があります。2022年の法改正により要件が緩和され、事務処理規程の備付けが不要になるなど、導入のハードルは下がっています。ただし、真実性・可視性の確保のための各種措置は引き続き必要です。
3. レシート管理の実務と注意点
3-1. 不正防止のための確認事項
経費精算時のレシートチェックでは、日付、金額、取引内容の妥当性を確認します。同一のレシートの重複使用や改ざんを防ぐため、経費精算システムでの二重計上チェックや、定期的な内部監査の実施が重要です。また、インボイス制度導入後は、適格請求書発行事業者の登録番号の確認も必須となっています。
3-2. 紛失・破損時の対応
レシートを紛失・破損した場合は、取引先から再発行を受けることが原則です。再発行が困難な場合は、クレジットカードの利用明細や取引履歴などの代替書類と、紛失理由を記載した理由書を提出します。ただし、インボイス制度下では、適格請求書がない場合の仕入税額控除には制限があるため、適切な管理体制の構築が重要です。
3-3. 経費精算システムの活用ポイント
経費精算システムを導入することで、レシートのデジタル保存やデータ管理が効率化されます。事業者登録番号のデータベース連携により、取引先の適格請求書発行事業者の確認を自動化することも可能です。また、経費カテゴリーごとの集計や分析機能を活用することで、予算管理や経費削減の施策立案にも役立てることができます。
参考文献:
1. 国税庁「インボイス制度 適格請求書等保存方式の手引き」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/zeimokubetsu/shohi/keigenzeiritsu/invoice_qa.htm
2. デジタル庁「電子帳簿保存法関連情報」
https://www.digital.go.jp/policies/posts/electronic_books
3. 財務省「消費税の仕入税額控除制度における適格請求書等保存方式に関する取扱通達」
https://www.mof.go.jp/tax_policy/summary/consumption/d04.htm
4. 経済産業省「経理の電子化に向けた取組について」
https://www.meti.go.jp/policy/it_policy/e-doc/
5. 日本商工会議所「インボイス制度対応ガイドライン」
https://www.jcci.or.jp/invoice/